シートン先生の診療や検査の考え方
検査というのは病気や体に起こっている病変を、いろいろな切り口からある一定の基準に照らしてみるデーターです。ですから早く治ってもらうために正しい診断をするには、獣医師の経験だけではなく客観的なデータである「検査」はどうしても必要です。
シートン動物病院は救急病院ですから、きちんとした検査ができる設備と体制が整っております。しかし、シートンでは一度にたくさんの検査をおすすめすることはありません。 あくまでも動物の体に負担をかけないことが一番の条件になりますので、検査は常に少しずつ、また静かにそっと行われるようにしています。
特に検査好きの他病院にから転院された患者さんは、シートン先生のゆっくりとした説明のしかたと検査の進め方に、最初は戸惑われるかもしれません。
でもどうぞ、考えてみてください。
動物たちにしてみれば、無理やり知らないところに連れてこられて。知らない人に触られて。
やれレントゲンだの、血液検査だの、 超音波だの、心電図だの。
挙句の果てには鎮静剤や麻酔をかけられて、内視鏡検査だのCTだの。尿を搾り取られたり、肛門に便の採取棒を入れられたり。
私たちが行く人間の病院の検査を受けるときだって、なかなかいい気分ではありませんよね。
私たち人間は承知で診察も検査も受けますけれど、病院に連れてこられる動物たちにしてみれば、なんと迷惑なことでしょうか。
検査を受けるストレスは、彼らにとっては相当なものです。そのストレスが動物の病気をひどくしてしまったらどうでしょう? なんのために行われる検査だかわからなくなってしまいます。
ですから時間をかけながら、そっとそっと検査を行おうというのが、シートン先生の考えです。
診察を受けるのを嫌がる動物は多いです。 それは知らないところに連れてこられて、知らない人のにおいを嗅ぐところから不安と恐怖が始まっているからです。ですからシートン先生は動物たちにとって診察や検査を嫌がることは、とても自然でもっともな事だと考えています。だから動物たちが診察や検査を嫌がった場合、シートン先生は診察をすぐにやめてしまいます。けっして無理なことはしません。
診察中にシートン先生が
「ここを触ってみてください。」 「ここがこうなっていることを、ご自分で確認してください。」 とくどいほど、繰り返してお話しすることがあります。
それは動物たちが出しているSOS信号を身近なおうちの人に、ちゃんとご理解頂きたいからなのです。
逆に、シートン先生が
「すぐに○○の検査をしましょう」「すぐに○○の処置が必要です」と、患者さんに申し上げる時には、
上記のストレスの心配よりも、急を要するもっと重大な出来事(病気)があるのだ!とお考えください。