★お腹が痛いジュリーの場合★
「先生、大変です。ジュリーが歩けないんです。お尻からお汁を出しています。」
Yさんが青い顔をしてマルチーズの愛犬ジュリー(メス7歳)を抱えてきました。
「いつからですか?ご飯は食べていますか?この状態では食べてないでしょう?」」
「歩けなくなったのは昨日からです。ご飯はもう3日ぐらい食べていないので、心配していたところです。先生、大丈夫ですか?ジュリーちゃんはたすかりますか。」
ジュリーのお母さんは不安で泣きそうになりながら、先生に聞いています。
さてジュリーさんを拝見しますと、かわいそうにお腹が痛いらしく、肩で息をしています。脱水が激しく、何日も栄養を摂っていないようにみえました。また全身状態が非常に悪く、一見してわかるほどの命にかかわる重体の状態でした。ですから、すぐに栄養点滴と注射の治療が始まりました。 同時に血液と尿の検査が行われます。
レントゲンや超音波などの詳しい検査の結果、子宮に膿みの溜まる病気(子宮蓄のう症)であることがわかりました。
子宮蓄のう症は、避妊手術を受けていない女の子の動物たちに共通する病気です。おなかの中が化膿するので、とても痛い!!苦しい病気です。また、命にかかわる大変な病気です。早期の軽症の場合は内科治療でお薬が効きますが、だいたいは膿の入った子宮を取り出す手術の対象になります。
「きっと、もっと前から病気は始まっていたのでしょうね。ジュリーちゃんは、ずいぶん我慢していたのですね。」
と先生が言うと、
「先生、ジュリーちゃんを助けてください。お願いします! お願いします!」
と何回も深々と頭を下げるYさん。
翌日、万全を尽くしてシートン先生の執刀の手術が施されました。小さなジュリーちゃんのおなかの中にはすごい量(1?近く)のドロドロとした臭い膿がたまっていました。
彼女は大変な手術をがんばって一命を取り止めました。しかし、手術前の全身状態がきわめて悪かったために、体が元に戻って元気になるには時間がかかりました。
シートン動物病院は救急病院ですから、様々な病気やケガの動物たちが急患として来院します。 私たちがいつも残念に思うのは家族の人が、もっと早くに気づいてくれれば動物たちがこんなに苦しまなくても済むのに・・・ということです。軽症なら医療費も余りかからずにすむのです。だから、シートン動物病院では動物たちの様子が普段とちょっと違うな、と感じたらすぐに電話をして下さい、とお願いしています。
実際、電話だけですむ場合が多いのです。どうぞ、ご遠慮なくお電話下さい。